お寺の手帖

「お寺の手帖」は暮らしの中で役に立つお寺の知識や、宗派や尊像など、
みなさまが興味をもたれるお話を当寺副住職の浅井将玄上人がわかりやすく語ります。

今月の聖語

今月の聖語 令和2年1月

2020年2月1日(土)

心の財を

つませ給うべし

日蓮聖人御遺文「崇峻天皇御書」

解説〜怒りと付き合う〜

心の宝を傷つける根本に貪り、愚痴、怒りの三毒があります。この3つは互いに絡み合っていますが、なかでもまず生ずるのは怒りではないでしょうか。

最近は心理学でも「アンガーマネジメント」という怒りへの対処法の研究が行われています。それによればカッとした時、最初の6秒が重要だとか。その間、いかに心のコントロールをするかによって沈静するか増幅するかが変わってくるとのことです。

ところですでに仏様はそのコントロール法を用意して下さっていたのです。カッとしたら心の口で唱えて下さい。

「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経」「はい6秒!」

今年の目標にしてみて下さい。

日蓮聖人ご遺文「崇峻天皇御書」

この書簡は堅固な信仰者、四条金吾氏に与えられた物です。金吾氏の欠点は非常に短気な点でした。いかに信仰が篤くとも短気は身を滅ぼす元になります。

この一節の前には「蔵の財よりも身の財すぐれたり。身の財より心の財第一なり」とあります。ここでの「心の財」とはひとえに忍辱の心を持つことでした。

建治3年(1277) 聖寿56歳

今月の聖語 令和元年12月

2020年1月2日(木)

「受くるはやすく

持つはかたし」

※「持つ」という漢字はここでは全て「もつ」と読まずに「たもつ」と読みます。簡単に説明致しますと、物をもつ時の意味合いではなく 受け続ける や もち続ける と言った意味合いで捉えて頂けますと幸いです。

日蓮聖人御遺文「四条金吾殿御返事」

解説 〜継続こそ力なり〜

「一念発起」という言葉があります。意を決して1つの事柄に取り組もうと立ち上がるのは大いに良い事です。しかしながらそれ以上に大切なのは、それを継続させることではないでしょうか。

継続は地味です。飽き易く迷いも起こり不安になりがちです。

しかしやり続けましょう。とにもかくにも自分を信じ、このご縁を下さった仏様を信じて続けましょう。

おのずと結果はついて来るはずです。

日蓮聖人ご遺文「四条金吾殿御返事」

本書は真跡は伝わってませんが「此経難持鈔」との事異称があります。その名の通り聖人の檀越で強固な信仰を持つひとりが四条金吾氏でした。しかしその金吾氏にもさまざまな迫害が加わり動揺が生じたのです。それを励ますために与えられたのが本書でありました。

聖人の教えの肝要は持ち続けること。持つとは継続であり、決して手放さないことです。

法華経信仰にはこの厳しさが要求されます。しかしその先には必ず喜びが待っているのです。

文永12年(1275) 聖寿54歳

今月の聖語 令和元年11月

2019年12月2日(月)

「一をもって

萬を察せよ」

日蓮聖人御遺文 「報恩抄」

解説 〜一を以て知る世界〜

狭い視野に留まり広く世間を知ろうとしないのは「井の中の蛙大海を知らず」と言います。

しかしこれにはこう続ける人もいます。「されど空の蒼さを知る」。たとえ世界が狭くとも1つの事柄を突き詰めていくことでその世界の深さや広がりを知ることがでにるというのです。

現代は情報が氾濫しています。それをキャッチすることも大切ですが、追いかけることに気を取られて本質を見極める目が曇ってはいないでしょうか。

「一」を侮ってはいけません。

日蓮ご遺文「報恩抄」

聖人の亡き師への弔意を通してまことの報恩について述べられたお手紙です。本書は仏教誕生から説き起こされ、お題目に帰結していく過程が詳細に語られています。

その中でも印度、中国へ渡り仏典を渉猟するよりも天台大師の経文に向かう姿勢にならって、法華経を軸にすべての経を取捨選択すべきことが解かれています。

標題のご文章に続いて「庭戸を出でずして天下を知るとはこれなり」とあります。この眼力は釈尊への信力から生じるのです。

建治2年(1276) 聖寿55歳

今月の聖語 令和元年10月

2019年11月2日(土)

「病によりて道心は

おこり候か」

日蓮聖人御遺文「妙心尼御前御返信」

解説

〜病も仏の慈悲心〜

「苦しい時の神頼み」とよくいいます。人間はそれほど強い生き物ではありません。日頃手を合わさない人でも病気になったり大きな困難に遭遇した時、神仏にすがりたくなります。これは自然の情ともいえるでしょう。

人智を超えた大いなる存在に頭を垂れ祈りを捧げる。ここに信仰との出会いがあるのではないでしょうか。

そう受け取るなら苦しみも神仏の慈悲の現れといえるかもしれません。

ただ大切なのは「喉元過ぎれば熱さ忘れる」重々用心しなければならない凡夫の性です。

日蓮聖人ご遺文「妙心尼御前御返信」

本書は駿河に住む妙心尼に与えられたお手紙です。

この女性は夫が重病に罹りました。余命幾ばくもないなか、夫本人は元より自らの髪を落として懸命に祈る妙心尼に励ましと夫の後生の慰めを与えています。

この中で「この病は仏の御はからいか」と述べられるように現世安穏、後生善処をもたらす法華経信仰を深めるため、あえて仏が与えられた病であると諭されているのです。

建治元年(1275)聖寿54歳

今月の聖語 令和元年9月

2019年10月3日(木)

日蓮聖人御遺文「法華題目鈔」

「仏道に入る根本は

信をもて本とす」

解説 〜求道〜

茶道、花道、書道、柔道、剣道、弓道など。日本古来の伝統文化、スポーツには「道」が付くものが多くあります。これらに共通するのは奥義を極めようとする求道心が伴っているという事ではないでしょうか。その鍛錬の中で自ずから技も磨かれ向上していくのです。

ところでこの奥義に達する為には、みずからが心身もろともにその世界に飛び込み、一体化を目指さなければならない事でしょう。

これすなわち仏道で説く「信」に通じるといえましょう。「道」は「信」によって達するのです。

日蓮聖人ご遺文 法華題目鈔

本鈔は女性信徒に与えられた書状です。表題が示す通り法華経の題目である南無妙法蓮華経に具わる功徳とそれを唱える人の功徳が明解に説かれています。

さらに「根本大師門人日蓮撰」と署名される如く、日本における法華経信仰の流れを伝教大師最澄に受けていることを表明しています。

一書を通じて「正直」と「信心」が肝要であることを強調されています。

文永3年(1266) 聖寿45歳