お寺の手帖

「お寺の手帖」は暮らしの中で役に立つお寺の知識や、宗派や尊像など、
みなさまが興味をもたれるお話を当寺副住職の浅井将玄上人がわかりやすく語ります。

今月の聖語

今月の聖語 令和2年8月

2020年9月7日(月)

花は根にかへり

真味は土にとどまる

日蓮聖人御遺文 「報恩抄」

解説   〜共栄〜

日蓮宗では仏壇の過去帳の冒頭に次の言葉を記すことがあります。「先祖は樹木の根なり。子孫はその枝葉なり。根を培い養わずして枝葉栄える理なく、花咲き実生ずるためしなし。この過去帳は先祖代々の徳を報じ子孫永久の教えに備う」。

先祖と子孫の関係を木に例えるならば正にこの言葉の通りでしょう。さらにここから学ぶことは枝葉や花から取り込んだ養分も根に蓄えられ、さらに樹木全体が大きく成長するということです。すなわち先祖子孫一体となって共栄することが重要なのです。

日蓮聖人ご遺文「報恩抄」

真味とは功徳のことです。この一節は恩師・道善房への追善の結びに述べられています。

日蓮聖人の出家は父母、師匠への報恩も大きな目的でした。それは法華経信仰へと導くことだったのです。しかしその思いは遂に師匠ひは理解されず師弟の確執は生涯解消されませんでした。

こんな葛藤を抱えつつも、ひるむことなく法華経弘通ひ邁進された聖人の姿こそが、亡き師に捧げる真味となる報恩行だったのです。

建治2年(1276) 聖寿55歳

今月の聖語 令和2年7月

2020年8月5日(水)

いのちと申す物は

一切の財の中に第一の財なり

日蓮聖人御遺文「事理供養御書」

解説〜いのちの実感〜

いのちが尊いことは百も承知。しかし、それが心にドスンと落ち実感として響いていますか?

理解と実感は異なります。実感するのは身近で命の危険に直面した時ではないでしょうか。

「私たちは盤石の大地に立っている」と思うのは錯覚です。薄氷の上に存在すると知った時、それは何ものにも代え難い財と気付くのです。

日蓮聖人ご遺文「事理供養御書」

ある檀越から白米を送られたことへの礼状です。本書の末尾に「凡夫なれば寒も忍びがたく、熱もふせぎがたし。食ともし」の述べておられます。

聖人が身延に入って3年目。雪深く人が訪れることも少なく、ご自身のみならず弟子などを養う食物にも事欠くありさま。そこへ届けられた白米や芋の供養。いのちを繋ぐことができたことを感謝されています。

数多のご法難に加え身延入山後も常に死との隣り合わせだったからこそ、いのちの尊さを常に実感されていたのでしょう。

法華経こそがそのいのちを生かす根源であるの述べられているのです。

建治2年(1276) 聖寿55歳

今月の聖語 令和2年6月

2020年7月4日(土)

「父母は常に子を念へども

子は父母を念わず」

日蓮聖人御遺文「刑部左衛門尉女房御返事」

解説〜親の心子知らず〜

「老いて後思い知るこそ悲しけれこの世にあらぬ親の恵みに」。親御さんを亡くされた方、ぐっと来るものはありませんか?親が健在の時は「頑固なおやじ」「うるさいお袋」とつい愚痴っていませんでしたか?それが自分も年を重ねてくると、厄介と思っていたその親から受けた愛情、存在の重さに気づいてくるのではないでしょうか。

お釈迦さま、日蓮聖人ですら「未だ父母への孝養足らず」と懺悔しておられます。ましていわんや私達においては。

このお言葉をよくよく肝に銘ずべし!

日蓮聖人ご遺文「刑部左衛門尉女房御返事」

刑部左衛門尉女房とは尾張の住人の伝えられていますが詳細は不明です。

この女性が亡き母の13回忌に当たることから供養のためにと銭20貫文などを聖人に送ったことへの礼状です。

本書は父母の恩を語り「教主釈尊が父母孝養のために説かれたのが法華経である。日蓮も母上にかけた苦労を悔い、その償いと報恩は法華経による供養より他になし」と説かれています。

弘安3年(1280) 聖寿59歳

今月の聖語 令和2年5月

2020年6月1日(月)

先ず四表の静謐を

祈るべきものか

日蓮聖人御遺文「立正安国論」

今月の聖語 解説

〜信仰の寸心を改めよ〜

「疫れい、遍く天下に満ち広く地上にはびこる。死を招くの輩、既に大半を超え…」

これは日蓮聖人の代表著述「立正安国論」の冒頭のお言葉です。まさに800年前の様子が今私たちの眼前に起きています。

立ち止まってこのポスターを読んでくださっているあなた。あなたは多少なりとも宗教に更には日蓮聖人に関心をお持ちの方でしょうか。ならばそのあなたに伝えます。これは文字ではなく日蓮聖人の肉声であります。

この惨状の原因を「鬼神乱るるが故に万民乱る」と聖人は警告をされています。鬼神とは私たち人間が生み出すものです。医学科学実証主義の時代に笑止千万なと思われるでしょう。しかし、そもそもその思いがおごりだと言われています。

今一度謙虚に素直に聖人の声に耳を傾けて下さい。そして「南無妙法蓮華経」とお唱えしてみて下さい。それが世界(四表)に、日本に、そしてあなたに、安穏を取り戻す手立てなのです。

「立正安国論」

聖人の行動原理は総てこの書から発出しているのです。

文応元年(1260) 聖寿39歳

新型コロナウィルスの影響で大勢の方が苦しんだかと思います。また、大勢の方がお亡くなりになりました。まずはその方々の追善供養を祈らせて頂きます。

南無妙法蓮華経

緊急事態宣言が解除にはなりましたが、まだまだ気を抜いてはいけないと思います。

一人一人の行動が多くの皆様の命を救います。

どうぞ皆様お身体ご自愛頂き、また元気な姿でお寺へお越し下さいませ。よろしくお願い致します。

今月の聖語 令和2年4月

2020年5月8日(金)

善悪の根本

枝葉をさとり

極めたるを

仏とは申すなり

日蓮聖人御遺文「智慧亡国御書」

解説〜闇を切り裂く大灯明〜

「無明の闇」という言葉があります。

これは真理を照らす明かりがまったくなく真っ暗闇ということです。まさに迷いの根本です。

私たちはその中を手探りでさまよい歩いています。そして自分の価値観で「善だ悪だ」と決めつけ生きているのです。それがますます迷いを増長する結果となっているとも気づかずに…。

ならば私たちになくてはならないのは、闇を切り裂く灯明のはずです。その明かりとなるのは仏さまの智慧だけなのです。

本仏釈尊の前に素直に額ずく。これこそが大灯明を手にできうる唯一の方法なのです。

日蓮聖人ご遺文「智慧亡国御書」

本書は駿河の住人、高橋六郎兵衛入道の妻・持妙尼に宛てられたといわれています。

人間が抱える貪瞋痴の三毒の増長によって寿命が短くなっていく。更には様々な教えの流布がかえって国を亡びさせようとしていると警告されています。

それを救うのは唯一、善悪の根本を極めた本仏釈尊の智慧が明かされた法華経であると主張されています。

建治元年(1275) 聖寿54歳