お寺の手帖

「お寺の手帖」は暮らしの中で役に立つお寺の知識や、宗派や尊像など、
みなさまが興味をもたれるお話を当寺副住職がわかりやすく語ります。

今月の聖語 令和7年5月

2025年6月1日(日)

仏法は眼前なれども機なければ顕れず

日蓮聖人ご遺文『新尼御前御返事』/
文永12年(1275)54歳

解説 =仏神の存在=

「おかげさまで」「いただきます」「ありがたい」「ありがとう」。
このような言葉は、お世話になっている人たちに対して感謝や謙虚さを表現する美しい日本語です。もともとは仏神に対して使う仏教用語でした。
日本人は昔から、見えないものに対して畏敬の念を抱く気質を宿しています。しかし文明や科学が進歩するにつれて「仏神や先祖の霊なんて存在するわけがない」と手を合わせる人が減ってきています。
特に都市部では葬儀や法事などの仏事は簡素化されたり省略される傾向が強くなってきました。
しかし、仏神は必ずいらっしゃいます。心の底から信仰し、人としての正しい道を歩んでいるなら、必ずご守護や計らいを感じられるようになるでしょう。

◎日蓮聖人ご遺文『新尼御前御返事』
日蓮聖人が故郷・安房の新尼に送られた手紙。望郷の念を情緒的に綴られると共に絶対的な法華経信仰を勧められます。疑いを持っている人に対しては非常に厳格な態度で臨まれます。
文永12年(1275)54歳