お寺の手帖

「お寺の手帖」は暮らしの中で役に立つお寺の知識や、宗派や尊像など、
みなさまが興味をもたれるお話を当寺住職がわかりやすく説明します。

今月の聖語 令和4年11月

2022年12月1日(木)

蒼蠅(そうよう)

驥尾(きび)に附して

万里を渡り

日蓮聖人御遺文『立正安国論』

解説  〜豊かな人生のために〜

蒼蠅とは青バエのこと。驥尾とは1日に千里を走る駿馬の尾のことです。小さな羽虫でも良馬の尻尾につかまっていれば、考えられないような距離を進むことができます。つまりどんな人でも、進むべき道を示してくれる師匠が立派なら、自ずとその域に近づいて行けるということです。
哲学者の森信三氏は、「人はすべからく、終生の師をもつべし。真に卓越せる師をもつ人は、終生道を求めて歩きつづける。その状あたかも、北斗星を望んで航行する船の如し」と、人生の道筋を示してくれる良き師との巡り会いを重視しています。
良き師とは、人だけではありません。自分自身が見聞きするものすべてです。それらに生涯教えを請うことで、知らず知らずのうちに、人生が豊かになっていくことでしょう。

日蓮聖人ご遺文『立正安国論』


日蓮聖人が鎌倉幕府へ奏進したもので、正しい教えを立てて、国家を安らかにするという祈りの書です。自身を蒼蠅に例え、驥尾を法華経と位置づけ、思いを綴った箇所です。
文応元年(1260)聖寿39歳