お寺の手帖

「お寺の手帖」は暮らしの中で役に立つお寺の知識や、宗派や尊像など、
みなさまが興味をもたれるお話を当寺副住職がわかりやすく語ります。

今月の聖語 令和6年11月

2024年12月1日(日)

おのずからよこしまに降る雨はあらじ

『三澤御房御返事』/
文永12年(1275)聖寿54歳

解説  =生まれつきの悪人はいない=
横殴りの雨が激しく窓を打ち付けると、うるさかったり、不安を覚えます。雨は本来まっすぐ下に落ちるはずが、風というきっかけ(縁)を得て、窓を打ち付けるのです。
  人間も同じです。生活苦などが原因で罪を犯す人。欲に目がくらんで誰かを騙す人や冷静な判断ができなくなった人。言葉などで誰かを傷つける人。本来まっすぐなはずの人間ですが、環境によってねじまげられ、自分を裏切り、誰かを苦しめたりします。
すべての人は悪意を持たず、まっすぐな心で誕生してきました。「いのち」を授かった原点に返り、誰もが本来の自分らしく幸せに生きられるように、善が連鎖する世の中を築いていきましょう。その起点となるのが、すべての存在に感謝と敬いの心を示す「いのちに合掌」なのです。

日蓮聖人ご遺文
『三澤御房御返事』
日蓮聖人身延ご入山の翌年、駿河の三澤房に宛てた手紙。僅か数行の文章ですがたくさんの信徒が佐渡から日蓮聖人を訪ね、お釈迦さまの大事な教えを聴聞している様子が伺えます。
文永12年(1275)聖寿54歳