お寺の手帖

「お寺の手帖」は暮らしの中で役に立つお寺の知識や、宗派や尊像など、
みなさまが興味をもたれるお話を当寺住職がわかりやすく説明します。

今月の聖語 令和4年7月

2022年8月1日(月)

父母の恩のおもき事は

大海のごとし

日蓮聖人御遺文 『上野殿御返事』

解説  〜恩を返す〜

世の中が複雑多様化しても、変わらない思いや変えられない道理があります。それは感謝の心です。それを伝える「ありがとう」は、有り得ることが難しいという言葉です。人との出会いや物との巡り合い、そして生まれ出でること。すべてが何千、何万、何億分の1という確率で、そこに存在するから、有ることが難しい…だから有り難い。 今ある自分の存在もまた有ること難しです。そんな自分を世に出してくれた親を大切にしましょう。気付いているならそれでよし。いま気付かなくても必ずそれに感謝する時がきます。その時その広さ、深さ、重みを身に刻みましょう。
自分の手足に触れてみましょう。鏡の前の自分を見ましょう。それは全部親からの贈り物です。有り難い自分を大切にしましょう。あなたがあなた自身を大切にすれば、亡き親であれ、健在の親であれ、それが一番の恩返しとなるはずです。

日蓮聖人ご遺文
『上野殿御返事』
日蓮聖人が信徒の上野殿に送られたお手紙です。聖人自身は両親のお側にいてお仕えできませんでした。だからこそご両親への思いは人一倍でした。ご恩の大きさを一言で言い当てた一文です。
弘安3年(1280)
聖寿59