お寺の手帖

「お寺の手帖」は暮らしの中で役に立つお寺の知識や、宗派や尊像など、
みなさまが興味をもたれるお話を当寺副住職がわかりやすく語ります。

今月の聖語 令和5年8月

2023年9月1日(金)

餓鬼は恒河を火と見る

『曽谷入道殿御返事』/
文永12年(1275)54歳

解説 〜ものの見方〜
100円玉は丸くみえますよね。では貯金箱の穴は? そう、四角です。100円玉を横から見ると四角だからです。100円玉は「丸」でもあり「四角」でもあります。
表題の文章は「私たちの心が物に飢えた餓鬼の状態だと水も火に見えてしまいますよ」いう喩えです。心の状態が安定していないと物事を偏った見方しかできなくなってしまうのです。
「正解依存症」という言葉があります。自分なりの「正解」を見つけると、それを疑うことができなくなり、他人にも自分の正解を押し付けて、自分なりの「正解」以外は受け付けることができない状態になることだそうです。
100円玉が「丸」でも「四角」でもあるように、日常生活のさまざまな出来事をいろいろな角度から見てみましょう。人それぞれの価値観や多様性を認める豊かな心が育まれます。

◎日蓮聖人御遺文『曽谷入道殿御返事』
日蓮聖人は多くの信徒へたくさんのお手紙をしたため、細かな心配りをしてきました。このお手紙は短いものですが、わかりやすい喩えで大事なことを伝えています。
文永12年(1275)54歳