お寺の手帖

「お寺の手帖」は暮らしの中で役に立つお寺の知識や、宗派や尊像など、
みなさまが興味をもたれるお話を当寺住職がわかりやすく説明します。

今月の聖語 令和6年5月

2024年6月1日(土)

このやまいは仏の御はからいか

『妙心尼御前御返事』/
建治元年(1275)聖寿54歳

解説 =病(やまい)から教(おし)えられること=

 イギリスのキャサリン妃が癌であることを公表し、ビデオメッセージを公開しました。「どんな形であれ、この病気に直面している皆さんは、どうか希望を失わないでください。あなたはひとりではありません」と癌で苦しむ世界中の人びとに温かいメッセージを届けました。
 仏教では病気を逃れられない「苦」の1つとします。一方で病気は私たちにたくさんの気づきを与えてくれます。看病をしてもらえれば、人と人との繋りのありがたさを知ることでしょう。「いのち」の尊さやこの先の「いのち」の使い道を考える時間になるかもしれません。
 私たちはいつ病になるかわかりません。生きていることが当たり前ではなく、生きていること自体が奇跡で、たいへんにありがたいことなのです。
 普段から「いのち」を見つめて心を調え、病になれば病からまた学、実りある人生にしていきましょう。

日蓮聖人ご遺文『妙心尼御前御返事』
夫を看病中の女性に宛てたお手紙です。病に対する心構え、死への安心を心優しく示されます。
建治元年(1275)聖寿54歳