お寺の手帖

「お寺の手帖」は暮らしの中で役に立つお寺の知識や、宗派や尊像など、
みなさまが興味をもたれるお話を当寺住職がわかりやすく説明します。

今月の聖語 令和3年4月

2021年5月1日(土)

一華を見て

春を推せよ

日蓮聖人御遺文「開目抄」

〜解説〜


「一を聞いて十を知る」

いよいよ百花繚乱の季節となりました。ところでその1つ、桜の開花は気象庁が標本木の蕾の状況を観察して予想を立てることでよく知られています。
このように桜に限らずサンプルを元にさまざまな事象を予想することはよくあります。これらから連想する言葉に「一を聞いて十を知る」があります。ですがこの「十」を知るのには優れた英知が必要となってきます。
その英知を開花させるには仏さまの智慧をいただくこと。すなわち信仰が重要になるのではないでしょうか。

日蓮聖人ご遺文『開目抄』
日蓮聖人はこの聖語の直前に「一渧をなめて大海の潮を知り」と示されています。すなわちすべてを調べずとも、一滴なめれば海水は塩辛いものだ。華も同様、桜を見れば春の訪れがわかると述べられます。これを「挙一例諸(一を挙げて諸々の実例とする)」と表現されています。その心は「一」の中に事象のすべてが収まっているのだということです。
この見地は釈尊の一切の智慧は法華経に収まる、との信仰から発出しているのです。

文永9年(1272) 聖寿51歳