お寺の手帖

「お寺の手帖」は暮らしの中で役に立つお寺の知識や、宗派や尊像など、
みなさまが興味をもたれるお話を当寺副住職がわかりやすく語ります。

鬼子母神

2019年2月1日(金)

鬼子母神とは、かつて訶梨帝母(かりていぼ)という夜叉(やしゃ)《鬼神》で、人の子を捉えては喰うので人々から恐れられていました。しかし、自ら多くの子((五百人とも千人とも)を持つ母でもありました。そこで、お釈迦様が人々を救うために一計を案じ、彼女が溺愛する末っ子を隠してしまいます。彼女は狂乱して我が子を探し回りますが見つけられません。落胆して嘆き悲しみます。
すると、お釈迦様が現れ、「多くの子のうちの一人を失ってもこんなにつらいのだ。己に子どもを喰われた親の悲しみ苦しみが解るだろう。」と諭して末っ子を返します。これにより改心した彼女は、世の子ども達を護る誓いを立て、安産・子育ての神として祀られることになりました。

盛圓寺の鬼子母神
「恐れ入谷の鬼子母神」という言葉をご存じでしょうか。
冗談めいて、「恐れ入りました」と言うとき、東京入谷のお寺に祀られる鬼子母神とを掛けた言葉です。鬼子母神像には、恐ろしい形相で合掌する鬼形と微笑んで幼子を抱く天女形があります。入谷の鬼子母神はもちろん怖い鬼形で人の心の中の邪悪を追い払っています。住職の持仏である、鬼子母神も鬼形で中山法華経寺の百日間の修行で、住職をお守り下さいました。

古くから盛圓寺に祀る鬼子母神は天女形で、江戸時代からお参りに来る子ども達を優しく見守っています。その鬼子母神を取り囲むように小型の十人の女神がおります。これは十羅刹女(じゅうらせつにょ)といい、鬼子母神の娘達です。鬼子母神は、「法華経」というお経では子ども達だけでなく、法華経を信仰する、信心の篤い人々も守護する神となっています。そのため、法華経を尊ぶ日蓮宗、法華宗などのお寺で祀られることが多いのです。